2009年02月07日

それでは権力は取れない

少し前の話になるが、
自民党の坂本哲志総務政務官が「年越し派遣村」について、
「本当にまじめに働こうとしている人たちか」と述べた。
また、「学生紛争の時の戦術、戦略が垣間見えるような気がした」と続けた。


こういうことを言っていては権力は取れない。

まず、言ったことを後から引っ込めるぐらいなら言わなければよかった。

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批判が集まるやすぐ撤回し、その後は沈黙したという流れだから、
これは本音がポロッと出てしまったということだろう。

「本当に働こうとしている人か」という部分の発言については、
いくつも議論、評論があったことと思う。


しかし派遣村は年末年始だけの緊急措置で、すぐ撤収してしまうものだし、
働かずにラクをしようと思ってあんなテント暮らしをするのは割に合わないと思う。
だいたい、じゃあ派遣村がなくて、失業者が年末年始に
行くところがなく死んだり、自暴自棄になって何かしたら、
坂本政務官、あんた責任取る?と言いたくなるものである。


が、今日やりたいのはその部分でワーワー論じ合うことではない。

「学生紛争の時の戦術、戦略が垣間見えるような気がした」という部分である。

私はむしろこの部分が、
いまの自民党公明党の、絶望的なところを表していると思う。

麻生太郎の家を見学しようとするフリーター一同を不当に逮捕した件
http://d.hatena.ne.jp/tzetze/20081028/1225035075
も含め、「貧困者の行動」を見る際のフレームワークが古すぎる。

「学生紛争」という古色蒼然たる言葉にまず吹き出してしまう。
麻生邸ツアーにしてもかつての左翼過激派かなにかに見えたのであろう。



ソ連が崩壊し、ベルリンの壁が崩れ、中国は改革開放への道を歩み、
西側にとって社会主義の脅威は過去のものになった。
社会主義の脅威が過去のものになったことすら過去のものになったといえる。

その現代に、「学生紛争」とは笑うしかない。

坂本政務官には、あの派遣村の労働者が、
衣食住ではなくて体制変革を求めているように見えたらしい。
政権を脅かす「敵」に見えたらしい。


厚生労働省の講堂を空けて労働者に提供するというのは
菅直人の発案で、菅が舛添大臣に電話して実現した話である。

その目的は、厚生労働省を占拠して体制転覆することではない。
現代にそんなイデオロギーもなければ、
力をもてあましたかつての学生と違い、腹の減った労働者にそんな元気もない。

寝る場所が欲しかったからである。

その証拠に、次の居場所があれば、いや、なくても、
期日が来ればおとなしく派遣村を退去し、厚労省も退去した。
学生運動のように体制を脅かすこともなかったし、
そんなことをしようと思うはずがなかった。それよりも、生活なのだ。


ただ衣食住と職を求めるふつうの失業者が
「敵」に見えてしまっているようでは非常にまずいし、
ものを見る目が時代錯誤で、いまだに冷戦期を引きずっている。

今は、イデオロギーによる闘争華やかなりしころとは違う。

人々にとってイデオロギー云々よりも目先の生活が大事という状況。
それがまさに今である。自民党にはそれがわからない。

わからないから「美しい国へ」は「国民の生活が第一」に敗北したのだが、
まだその反省が活きてきていない。

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派遣村の主催者の湯浅誠は特別の党派には肩入れしない人間で、
たとえば共産主義者ではない。
まあ、小泉竹中路線には反対せざるを得ないが、
政権とも柔軟に交渉して妥協や調整ができるマキャベリストである。

ただ、派遣村に出入りした人間や運営者の一部に、
いわゆる「左翼」がいたのは事実である。

保守の側からは、そこをつかまえて非難する論調もある。

非難することの正しさについてはとやかくいわないが、
しかし戦略的思考というか、権力闘争に勝つための思考が絶望的に欠けている。


現実として失業者は多く発生しており、失業の不安を抱える人も多い。
そういう状況にあって失業者には同情の目が、
政権の雇用政策には批判の目が向けられている。


であれば、失業対策をして、失業者を手助けするのが、
いま支持率を上げ、権力闘争に勝つ一番の戦略である。


その点、失業者対策で、政府がまったく、本当にまったく何もできず、
民間のNPOに先を越されたのは情けない。

その点野党も同様だが、野党はいち早く視察に行ったり、
何らかかのレスポンスをした。

自民党公明党のそれは、決定的に後手に回った。


保守の側が言う。「左翼」が失業者に付け込んで勢力拡大を狙っていると。

しかし政治の世界に生きるものの考えが、これではいけないと思う。

では右翼もテント張って炊き出しやればよかったのである。


いま失業者を手助けすることはたしかに票になるのである。
つまり、「失業者に付け込んで勢力拡大」が、できる。

言葉は非常に悪いが、
いま商売に例えれば失業者は、願ってもない「顧客」である。

その「顧客」をとった商売人がたとえば共産党であり、
共産党はそれにつけこんで勢力を拡大する権利がある。


保守思想というのは本来、弱者を守る思想である。

保守や政権の側が、「顧客」を取れなかった反省をするどころか、
自分たちも今後機会があれば「派遣村」的な企画をするという発想すら、
まったくないところが、本当にまずいところである。

派遣村は左翼がやった企画だと言いふらして勝った気になっているが、
それは左翼が立派さを広める利敵行為である。

自分たちが同じことをやらなければいけないのである。


けっきょく、失業者を、というか、生活に悩む市民を、
「敵」ではなくて、良く遇すれば票を入れてくれる「顧客」と見るようにならなければ、
その政党、政権は、権力闘争で必ず負けることになる。

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失業者を手厚く処遇すること、たとえば派遣村のような取り組みは、
間違いだ、と考えるならそれはそれでもいい。

失業者や多くの世論からの反発は避けられないだろう。

それでも信念を貫き通し、失業者をいったんは敵に回しても、
世論を説得し、意見を通して勝つというのならそれでもいい。

実際、派遣村などに対する疑問の声がないわけでは決してなかった。

しかしそこまでして、勝つのには並々ならぬ信念と説得能力、覚悟が必要だ。

ただ、少なくとも、坂本政務官にはその覚悟はなかったらしい。

そういう体たらくでは権力は取れない。

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posted by socialist at 02:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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