2009年02月21日

共産党のデイ・アフター・トゥモロー、それと選挙制度

「ネーダー効果」という言葉がある。

これはアメリカ大統領選挙に毎回出馬している、
ラルフ・ネーダーという人物からとられた言葉である。


皆さんご承知のように、
アメリカの政治は強固な二大政党制であり、
共和党と民主党以外はほとんど影響力を持たない。

従ってラルフ・ネーダーが無所属で大統領選挙に出馬しても、
まったく当選する見込みはない。

ネーダーは当選可能性を度外視で選挙に出ている。
このこと自体は決して責められることではないだろう。

ところが、である。
ネーダーの政治スタンスとしては左派よりで、
どちらかといえば、共和党よりは明らかに民主党に近い。

従って、民主党に入れるはずの中道左派ないし左翼の有権者の票が、
ネーダーと民主党候補の間で分散してしまう。

そうなると、結局のところ
ネーダーが最も嫌いな共和党を助けることになってしまう、
というのが「ネーダー効果」である。

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日本でもまったく同じような構図が発生している。

日本共産党である。


日本共産党にはラルフ・ネーダー以上の勢力があるが、
基本的に、小選挙区で議席を取るだけの力はない。

ところが日本共産党は候補を立てる。
これは実質上、自民党を助けている。

共産党がいなければ、共産党に投票するはずだった有権者が、
民主党に流れる可能性がそれなりにある。

これは「ネーダー効果」と同じ状況であって、
共産党支持層がもっとも嫌いなはずの自民党を間接的にアシストしている。


しかし、簡単に「馬鹿だなあ」と言うなかれ。

公式的な共産党の立場としては、やはり自民も民主も駄目なのである。
自民より民主のほうがマシだろうと思っているのは、
実は、民主党支持者の勝手な議論なのかもしれない。


また、日本の選挙には特殊事情がある。
小選挙区と比例代表が並立していて、同時に投票が行われる。

「共産党の候補が出ているから」選挙に行こうと思った共産党シンパ。
共産党の候補の演説を聞いて、あ、この人いいなと思った無党派。

共産党が出ていなければ棄権したか、他党に流れていたはずの人々だ。

この人たちは、小選挙区で共産党候補の名前を書く。
この候補は落ちてしまい、投票は死票になる。意味がない。

しかし、比例代表の方にも、恐らく「共産党」と書いてくれるはずだ。
これは死票になるとは限らない。
共産党は、衆議院で自身が得る、約9議席のすべてを比例代表で得ている。

要するに、比例代表の票を掘り起こすために、
小選挙区に候補を立てるインセンティブがあるのである。

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しかし、選挙にはお金がかかる。

とくに、「供託金」はでかい。

これは冷やかしで適当な奴がどんどん立候補するのを防ぐための制度で、
あらかじめ選挙管理委員会にお金を預けておき、
あまりにも得票率が少なすぎるとき、それが没収されてしまうというものだ。


共産党としては、もうお金もあまりないので、
供託金が没収されてしまいそうなほど勢力が弱いところには、
もう候補者を立てないことにした。

これで大喜びしたのが民主党陣営で、
危機感を抱いたのが自民党陣営であるから、
今まで明らかに「ネーダー効果」は発生していたのだといえるだろう。

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自民党・公明党は策略を練ってきた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080619/stt0806190046000-n1.htm

供託金が没収されてしまうハードルを下げて、
どんどん共産党に候補を立ててもらって、
左派・リベラル層の票を分散させてしまおうという寸法だ。

あからさまな党利党略だが、戦略としては間違っていない。

もっとも共産党はその手に乗らず、
候補を増やすという方針にはならなかった。

それで、この話は立ち消えとなった。
自民党・公明党の無節操さにはあきれる。

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結局、「自民、民主、共産」の3候補が出るパターンでは、
共産党支持層はよく考えないといけない。

何が何でも共産党に入れるのか、
「自民よりマシ」な民主党に、泣く泣く入れるのか。

仮に民主党に入れたら、そういうのを政治学では「戦略的投票」という。

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しかし、なんで有権者は、一番気に入る政党に入れられないのか。
選挙制度を工夫すれば、もっと心置きなく投票できるのではないか?

たとえばフランスの大統領選挙は少し工夫している。

過半数を取る候補がない場合、上位2名で決選投票を行う。

こうすれば、決選投票にはほとんど確実に、
右派の国民運動連合と、左派のフランス社会党が残るので、
第1回は心置きなく好きな政党に入れることができる。

もっとも2002年の選挙では、
http://ja.wikipedia.org/wiki/2002%E5%B9%B4%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99

このように決選投票にフランス社会党ではなく、
極右政党、国民戦線のルペンが残ってしまっている。

5位以降の「労働者の闘争」、「市民運動」、「緑の党」、
「革命的共産主義者同盟」など、左派が分裂しすぎだ。

そのあたりが少しでもフランス社会党に票を流していれば、
どうみてもルペンには勝っていたはずだ。

この選挙制度も、完璧ではない。

何より日本で、国会の選挙で二回も投票をやる余裕もなかなかなかろう。

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もっと楽そうなのは、
好きな候補順に、優先順位を書いてもらう投票方式だ。

この方式の総称を「選好投票」という。

例えばだが、一番好きな候補から一番嫌いな候補まで、全部書いてもらう。

で、共産党が落ちたとしても、
仮に共産党に入れた人が「1.共産 2.社民 3.民主 4.自民 5.公明」と書いていれば、
それを考慮する。

その考慮の仕方は、いろいろ方式があるがややこしいので省略する。
もちろん、ややこしいこと自体が欠点である。投票も面倒だし。

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さらによいといわれるのが、
アマゾンのレビューなどで、星1つから5つまでの点をつけるように、
候補者に点数をつけてその平均で争う「範囲投票」である。

これなら、基本的には票割れ等々の問題は起こらないし、
民意を比較的正確に反映する。

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私はどちらにしろ比例代表制がよいと思うからなんなのだが、

ともあれ、少なくとも今の小選挙区制度というものは、
必ずしも民意をうまく反映しないんじゃないだろうか。


フランス大統領選挙、選考投票、範囲投票など、
参考にしてみてもよいのではないかとは個人的には思う。

範囲投票は新しすぎるアイデアであり、
公職選挙で採用されたという話はまだ聞かないが・・・

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とはいえ、当分は確実に今のままの選挙制度が続いていくわけで、
共産党支持層はどういう風に振舞うか、思案のしどころである。


共産党支持層にとって、民主党が必ずしも自民党よりいいか、
というと別にそんなことはまったく確かな話ではないのである。

民主党はいうまでもなく、自由主義経済の推進政党であるのだから。


ただ共産党支持層にも、一般党員のレベルでは、
民主党政権に期待する声もあるようである。

ひとつは「自民よりマシ」論であり、
もうひとつは、「次の次」論である。

いったん民主党に政権を作らせ、
その民主党政権をもまた批判する。

「自民も駄目、民主も駄目」ということになれば、
「左からの政権批判」の受け皿は、いよいよ共産党ということになる。

これはなかなか面白い話で、
共産党が伸びるとすればそれが一番現実的なシナリオではないか。

もっともそれは民主党政権が失政をして
厳しい批判に立たされているという状況であって、
私にとってはそれほど愉快な未来図でもないが。

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共産党についてはいろいろ論じてみたいこともあるが、
それはまた別の機会に譲る。

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選挙制度については、
『投票のパラドクス』という本がたいへん面白い。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791764153/

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高速道路無料化に関し政策論争を望む

高速無料化:効果2.7兆円 民主「試算隠し」批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090220-00000121-mai-pol

 国土交通省が所管の財団法人に発注した高速道路料金引き下げに伴う経済効果の試算業務で、高速道路無料化の効果を「2兆6700億円」と推計する結果が出ていたことが分かった。民主党の馬淵澄夫氏が20日の衆院予算委員会で指摘した。無料化は民主党の看板政策の一つだが、法人が国交省に提出した報告書からは、無料化に関する記述が削除されていた。馬淵氏は「なぜこの結果を表に出さないのか。民主党の政策だからか」と迫ったが、金子一義国交相は「私のところには来ていない」とかわした。【田中成之】

 試算は国交省の国土技術政策総合研究所が07年10月に財団法人「計量計画研究所」に発注。引き下げによる利用増で生じる時間短縮効果や、一般道での事故減少効果などを推計した。報告書は3割引き下げで5200億円、5割引き下げで1兆200億円の効果が生じるとし、政府の経済対策の柱の高速料金引き下げの判断材料の一つとなった。

 馬淵氏は試算業務の関係者から、無料化部分が削除される前の報告書を入手。「無料化の結果を隠ぺいか削除かして表に出さず、3割引き(に相当する引き下げ)を実行しようとしている。無料化を検討すべきだ」と迫り、削除前の報告書公表も要求した。

 麻生太郎首相は「ただにすれば効果が出るのは当然。しかし、(旧)道路公団の借入金の返済を、道路を使わない方々の税金から賄うことになり、問題ではないか。資料(提出)は国交相に検討させる」と答弁した。

 民主党は、検討中の高速道路無料化法案の「重要なデータになる」(中堅)として、政府への提出要求を強めていく。

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たとえばこの高速道路無料化の話にしても、
資料を隠すなんていうことはせず、建設的な議論をすればいいと思う。

道路行政なんてことはまったく門外漢であるので、
ちょっと実際のところはよく分からないが、
これはなかなかよさそうな政策だと思うのだがどうか。


無料化にかかる費用は、1.5兆円。
経済効果が2兆6700億円という試算があるのであれば、
まあ若干得かなという評価になっている。

ただ、無料化となれば
「引き下げによる利用増で生じる時間短縮効果や、一般道での事故減少効果」
以外の効果も見込めるので、経済効果はもっと高いと思う。

ただ、正確なところは私にはわからない。


わかることとしては、
これは皆さんが思う以上に、スケールが大きい話である。
それだけに、リスクもあるだろう。


私なりにメリットを書き出してみる。
・観光や帰省などが楽になる
・ヒト、モノを運ぶスピードがアップ、コストがダウンし、経済効果が発生
・たとえば宅配便や通販の配送料なども安くなるかもしれない(?)
・大型トラックなどが下道を走らなくなるので事故が減少する
・料金所撤廃により出入口をもっと簡素なものにでき、多く作れる
・ETCの設備投資がいらなくなる
・出入口増加により、より多くの沿道の地域が活性化(?)
・地域のネットワーク化に貢献(?)
・料金所撤廃により、渋滞の原因が解消(?)


デメリット、あるいはリスクも考えられる。
・財政支出が増える
・高速料金を税金でまかなうのは車乗らない人に不公平(麻生氏の議論)
・新幹線やフェリー等々の業者に打撃を与える可能性(?)
・高速の利用が増えるため、渋滞が発生(?)
・ストロー現象により衰退する自治体が出る(?)
・せっかくのETC設備が無駄に

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と、このように、賛否両論の面から色々考えられる。
政策論争の素材としては面白いと思うのだ。

私個人は賛成だが、
国会では反対側から色々な意見が出ればいいと思う。

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ただ、自民党側からの反論が、少し寂しいような気がする。

民主党の政策に対して、自民党が必ず言うのは「財源がない」という議論だが、
天下り官僚の退職金とか、道路建設とか、定額給付金とかの費用はあるくせに・・・
という議論になってしまえばやはり苦しい。

「荒唐無稽」と切って捨てたのは金子大臣だが、
自民党や公明党も値下げを言い出しているのだから説得力に欠ける。

麻生氏の言うのは「受益者負担の原則」だが、
経済効果があるとなれば車に乗らない人も得をするのだから、
あまりこだわる必要もないと思われるかどうか。

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そういう議論に終始するよりも、
実際のところ、高速道路が無料になったらどういう影響を及ぼすのか、
ということを議論したり、シミュレーションしたりするほうが有意義だと思う。

私が気になるのは、
とにかく、高速道路無料化で打撃を受ける人はいないかということ。
そういうことを議論すればいいと思うのである。


政権交代したら、高速道路無料化は実現の方向へ動くのだろう。

高速道路無料化に限った話ではない。
いろいろな目新しい政策が、実行に移されることは間違いない。

子ども手当、農家の戸別所得保障、年金制度改革・・・
いずれも魅力的なアイデアだが、穴がないという保障はどこにもない。


その時、自民党公明党にはぜひ色々と研究を行い、
批判して、より精緻なプランに練り直させること、
またあまりにも問題が多いようであれば、
再考を促すことを期待したいと思うのだ。

ただ自民党公明党には、その能力がありやなしや、
ということが懸念になってしょうがないのである。


また、与野党の勢力が均衡していなければ、
政策論争などおざなりにしても構わない。
問答無用、強い方の案が通ってしまう。

後期高齢者医療制度などがそうであった。

今度は民主党の横暴を見ることにならないよう願いたい。

その意味で麻生氏のブレ、中川氏の泥酔等々は、
まったく余分なことであり、残念である。
彼らのせいで、おそらく民主党は勝ちすぎてしまう。

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ちなみに、首都高、阪神高速、
東名高速の御殿場までは無料にならないことを書き添えておく。


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ついでに書いておくが、
政策論争のときは、財源論に拘泥してほしくない。

財源があるとかないとかいう話は不毛なものになりやすいから、
政策論争をする時に財源論に終始するのは、私はどうかと思う。

お金がかかる政策でもほかのことをやめればできるのであるし、
場合によっては、借金してやることも許される(濫発は困るが)。



無駄、無駄、と言われる道路建設だって、
「この道路は要るか要らないか」と言われれば、
そりゃまあ、ないよりはあった方がいいねということになるし、
出そうと思えばそれに予算をつけることもできる。


問題は「何に対して優先的にお金を使うべきか」
及び「いま国の借金を減らすことをどれくらい重視するか」
ということである。

高速無料化なのか、子ども手当なのか、失業対策なのか、農家の所得保障なのか、小学校の耐震化なのか、介護職への支援なのか。
定額給付金なのか、道路建設なのか、地デジ対応テレビへの補助金なのか。
それとも国の借金を減らすことを急ぐべきなのか。

数ある政策の中で何を優先すべきかということである。


だから個別の問題を論じる中では、
「この政策の財源はあるかないか」という議論は不毛になるのだ。

その政策、優先順位が高ければ財源は「『ある』ことになる」。
低ければ、ないことになるのだ。

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社民党のサイト、
財政を扱ったページにはこのような言葉が掲げられているが、名言である。
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/other/070901_column.htm

「財源というものは、ないと言えばない、あると言えばあるものであって、政府の意思によって、あるいは国会の意思によって、財源が生じてきたりなかったりするものである」

社会党きっての財政通であった木村喜八郎参議院議員の言葉だという。

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posted by socialist at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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